既存の住宅を増築リフォームして二世帯にする際、先々のことも見据えた長期的な計画を立てる必要があります。一口にリフォームと言ってもその方法はさまざまで、増築リフォームをしたはいいものの、後でトラブルになるケースもあるので注意が必要です。そこで今回は増築リフォームのメリット・デメリットをはじめ、注意点などを詳しく解説します。
二世帯住宅に増築リフォームするメリットとデメリット
二世帯住宅に増築リフォームをする際、メリットだけではなくデメリットもあります。ここではそれぞれについて解説していきます。
費用を抑えられる
両親の住んでいる家を増築リフォームする場合は、土地の購入費が不要なのでその分コストを抑えられます。さらにキッチンや浴室などを共有するのであれば、水道代やガス代といった光熱費を軽減することも可能です。
このほかにも増築で二世帯住宅にした場合、条件次第では土地の固定資産税を抑えられるのでよりお得になります。一世帯の固定資産税は、土地面積が200m2以下であれば「土地の評価額×1/6」で計算をする「小規模住宅用地」が適用になり、それ以上は「評価額×1/3」の「一般住宅用地」が適用されます。条件を満たした二世帯住宅であれば、土地面積が400m2以下で小規模住宅用地が適用となるため、税金の軽減が可能です。適応条件は各世帯が構造上と利用上において独立していることです。玄関やトイレ、風呂などが世帯ごとにあり、独立して生活していると認められた場合に適応となります。この条件は自治体により異なる場合があるため、各市町村のホームページや役所の窓口で確認をしましょう。
また税金を抑える方法として、一緒に生活をする子世帯が土地を相続する際に「小規模宅地等の特例」が利用できる場合があります。小規模宅地等の特例とは税金を軽減する方法のことで、故人が住んでいた土地や事業をしていた土地、貸していた土地を特定の条件を満たす人が相続するときに土地の評価額を最大で80%減額できる制度です。
助け合いや協力をしながら生活できる
家事や育児などへの協力を両親に仰ぎやすいのは、二世帯ならではのメリットと言えます。また、親の介護のサポートが必要になった場合や病気になった場合なども即座に対応してもらいやすいです。双方の世帯が遠方の場合とは違い、お互いに助け合いやすい環境であることが利点だと言えるでしょう。
生活スタイルや価値観のズレがストレスになる
二世帯住宅の場合、双方の生活スタイルのズレは避けられません。世帯を一階と二階とで分けていても、それぞれ起床や就寝の時間が異なる場合には、生活音や物音が迷惑にならないようお互いに気を遣わなければいけません。ほかにも、キッチンやお風呂などの水周りの設備や洗濯機などの家電類を共有する場合、使用する順番を決めておく必要があるなど、なにかとストレスが生じやすいでしょう。また親世帯と子世帯とでは年代差による物事の認識のズレが生じやすいので、不便を感じることも少なからずあります。
相続問題が起きる可能性がある
住宅に関する相続は、一般的には同居している人が相続する場合が多い傾向にあります。しかし、同居する子世帯以外に兄弟や姉妹がいる場合は、相続時の金融資産の分配で不公平さが出ないように配慮する必要があります。特に相続する遺産が二世帯住宅以外にはあまりない場合、トラブルになりがちなので生前から分配について話し合っておくとよいでしょう。
二世帯住宅の増築リフォーム前に明確にしておくべきこと
住んでいる家を二世帯住宅に増築リフォームする際、どのような方法で増築すべきかを明確にしておく必要があります。ここでは、その際のポイントをご紹介します。
増築か別棟のどちらにするのか
増築には、リフォームする家と増築部分とをつなげた建て増しと、同じ敷地に別の家を建てる別棟の2種類があります。
建て増しの場合は同じ建物内に二世帯が暮らすため、建物代や光熱費などの費用の負担を軽減できます。デメリットは、お互いのプライバシーに配慮する必要があることです。
別棟の場合は、お互いのプライバシーを確保できる点が一番のメリットだと言えます。一方で建築費用は建て増しに比べて高い上に、別棟を建てるだけの土地の広さが必要です。
双方の世帯の希望を考慮しながら、自分たちに合う方法についてをきちんと話し合うことが大切です。どうすべきかが分からない際は、リフォームに精通した工務店などに相談してみましょう。
将来の活用方法
増築リフォームを行う前に、将来的に二世帯ではなくなった場合についても考えておくとよいでしょう。単世帯で暮らすことになった場合、使用しない部分の減築や孫世帯と二世帯で生活することを視野に入れてそのまま残しておく方法があります。使用しないのであれば、売却したり賃貸物件にしたりするなど、不動産運用としての活用も可能です。
二世帯住宅の3つのスタイル
二世帯住宅は、3種類のスタイルに分けられます。ここでは、それぞれの特徴について解説します。
全同居型
キッチンやお風呂、トイレなど全てを共有する昔ながらの同居スタイルのことです。増築リフォームが小規模なので工事の期間が比較的短く、費用を安く抑えられます。ただし共有する部分が多いため、お互いのプライバシーの確保が難しくなります。
部分同居型
お風呂や玄関など、一部分だけを共有するスタイルのことです。キッチンやリビングなどの設備は世帯ごとに設けていることが多いため、ある程度のプライバシーを保てます。共有する設備の内容次第で費用が変わるため、予算に沿った調整がしやすいです。一方で双方の世帯で生活リズムにズレがある場合、共有する設備を使用する際にストレスの原因となる可能性があるため注意が必要です。
完全分離型
名前の通り、同じ土地で生活をしているものの共有部分がなく、世帯ごとに独立しているスタイルのことです。ほかの2つの方法に比べて増築リフォーム費は高くなる傾向にありますが、プライバシーを確保したいけれど土地に別棟を建てるだけの余裕がない人におすすめです。分離方法は、階で分ける上下分離と左右で振り分ける左右分離があります。
二世帯住宅リフォームの注意点
土地には建築基準法の規定があるため、既存の住宅が増築リフォーム可能かどうかを確認する必要があります。ここでは、増築リフォームの際に確認しておきたい内容を3つご紹介します。
建ぺい率と容積率の確認
建物の大きさは、土地ごとに設けられた建ぺい率と容積率で決められています。規定を超えた大きさの建物は違法建築となるため、建てられません。
建ぺい率とは、敷地に対する建築可能な面積の割合のことです。建ぺい率60%の場合は、その土地の60%まで建てることができます。建ぺい率の割合は土地を真上から見下ろした状態で決定するため、階により床面積の大きさが異なる場合はより大きい方が建ぺい率の対象になります。
容積率は、土地に建築可能な建物の総床面積の割合のことです。2階建ての場合は1階と2階の床面積が容積率の対象で、例えば建ぺい率50%、容積率が100%ならば建ぺい率50%の二階建てが建てられます。車庫やベランダなどは大きさの条件付きで容積率の対象外となるので、あとどれくらい使用できるかを確認しましょう。
ローンの担保
増築リフォームをするにあたってローンを組む際、土地や増築リフォーム予定の家全てを担保に入れなければなりません。理由は、仮にローンの返済ができずに銀行が債権回収のため担保を処分するとなっても、増築リフォームをした部分だけでは新たな買い手が見つからないためです。ほかにも、増築リフォームの時点で住宅ローンが残っている場合は、すでに契約をしている銀行以外でローンを組めないので注意しましょう。
家を売ったり貸したりしにくくなる
相続のタイミングや何かしらの事情により、二世帯を解消し住宅の売却を検討する場合は、通常の戸建てよりも需要が低く売却が難しいです。空き部屋を貸し出す場合も、別棟でなければ難しいでしょう。
二世帯住宅リフォームの費用について
リフォーム費用は設備をどこまで共有するかで変わってきますが、ここでは一般的な相場についてまとめました。また、二世帯住宅には少子化対策のためのさまざまな補助金があるので、こちらも併せて解説します。
二世帯住宅リフォームの費用相場
住んでいる地域や工事内容によって差がありますが、一般的なリフォームの費用は約1,000万円~1,500万円です。全同居型のように設備を共有する二世帯住宅では、1,000万円以下に抑えられることもあります。完全分離型やエコキュートのように太陽光パネルを設置するなど、こだわりのある設備を投入する場合は相場や予算を上回る傾向にあります。
二世帯住宅で利用できる補助金
二世帯住宅の補助金には、以下の制度があります。
・長期優良住宅化リフォーム推進事業
・地域型住宅グリーン化事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、単一世帯のリフォームや二世帯住宅のリフォームを対象とし、既存の家の性能向上を目的とした国土交通省による補助制度です。制度を受けるには、長期優良住宅化リフォーム推進事業に登録している会社に工事を依頼する必要があります。
地域型住宅グリーン化事業は、森林伐採をはじめとする環境負荷を減らすため、木造住宅の性能向上を目的とした国土交通省による制度です。制度で支給される金額は木造住宅により異なり、それぞれ上限額があります。この制度は国土交通省に認定された地域の中小工務店や中小住宅生産者しか手続きできないため、連携しているかどうかを確認しましょう。
二世帯住宅リフォームはしっかりと計画を立てることが大切
リフォームで二世帯住宅にする場合は、増築にするのか別棟を建てるのかどうかを決めておかなければなりません。どういった二世帯のスタイルがお互いにとって快適であるかをじっくりと話し合う必要があります。増築リフォームをお考えの人はもちろん、ご自身にぴったりのリフォームプランが分からない人も、お気軽に弊社までお問い合わせください。実績豊富な弊社スタッフが、お客様の状況にあわせた最適なプランをご提示いたします。