増築は、建て替えより手軽で費用が抑えられると思っている人が多いかもしれません。しかし、場合によっては増築では対応しきれなかったり、複雑な手続きが必要になったりすることがあります。増築の基本を知らないと、想定より費用や手間がかかって後悔するといったことになりかねません。
この記事では、増築のメリット・デメリットや事例別の費用相場などを詳しく解説しています。増築を考えている人は必見の情報なので、ぜひ参考にしてください。
増築とは
家の間取りを変える大規模なリフォームには、増築・改築・新築の3つの種類があります。よく似た言葉ですが、どの方法を選択するかでできることが違ったり、必要な手続きが変わったりする場合があります。まずはそれぞれの違いを確認しておきましょう。
増築の定義
増築とは、同じ敷地内で建物の床面積を増やすことです。もともとある家に新しい部分をつなげるほか、同じ敷地内に別の建物を建てる場合も増築と定義されます。
増築のパターンとして
・平屋を2階建てにする
・部屋を1部屋増やす
・母屋とは別に新しく離れ(別棟)を建築する
などがあげられます。
改築の定義
改築とは、もともとある家を取り壊してもとの家と同様の構造・広さ・用途の家を建てることです。「広さに不満はないけど全体的に間取りを変更したい」といった場合に選択されます。家が新しくなるメリットがありますが、増築や新築のように床面積は増やせません。
新築の定義
新築とは、もともとある家を取り壊してもとの家とは構造・広さ・用途が異なる家を建てることです。家を取り壊すところまでは改築と共通していますが、「構造・広さ・用途が異なる」点がポイントです。たとえば、木造住宅を壊して再度同じ規模の木造住宅を建てるのは「改築」ですが、同じ規模であっても鉄骨住宅を建てると「新築」の扱いになります。
増築のメリット
増築すると居住スペースが増やせたり、費用や手間を減らせたりするメリットがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
居住スペースを増やせる
当然ですが、増築すると床面積が増えるので居住スペースを増やせます。そのため、新しく子ども部屋が必要となった場合や、二世帯住宅にしなくてはいけないといった場合に向いています。
費用を抑えられる
改築や新築と比べると費用が抑えられるのも増築のメリットです。改築や新築ではもともとある家を取り壊さなくてはいけないため、解体費用、仮住まい費用、引っ越し費用などリフォーム費用以外にもさまざまな費用がかかります。
一方、増築なら家を取り壊す必要がありません。また、新築や改築に比べると工事の規模も小さく済む場合が多いため低コストでおこなえることが多いでしょう。
住んだまま工事をおこなえる
工事内容にもよりますが、増築の場合はもともとある家で暮らしながら工事がおこなえる場合が多いです。新築や改築の場合は家を取り壊さなければならないので、仮住まいを準備しなくてはいけません。仮住まいで生活するとなると、仮住まいを探したり何度も引っ越しをしたりと手間がかかるため、なにかと大変です。
とはいえ、実際には増築の場合でも水回りが使えなくなったり、工事の音やにおいなどが気になったりするときは、仮住まいを用意しなくてはいけないこともあります。それでも、家具や家電など家のなかのものをすべて移動させる必要がないため、新築や改築と比べると手間がかからないと感じる場合が多いでしょう。
増築のデメリット
手間が少なく比較的コストが安いので魅力的に感じる増築ですが、統一感が損なわれたり耐久性が低下したりするデメリットがあります。それぞれ詳しく解説します。
統一感が損なわれる
増築は、もともとある建物に新しい部分をつなげるので、統一感が損なわれる場合があります。とくに、築年数が経過している家だと同じ材料が準備できなかったり、経年劣化により変色したりしている場合があるので、色や柄の違いが気になるかもしれません。
統一感のなさがどうしても気になる場合は、工事の規模を広げて外壁や屋根などを全体的にリフォームするのがおすすめです。そうすることで、増築部分ともとの家を一体化できるので、統一感が保たれます。壁紙や天井などの内装についても、全体的に張り替えることで統一感を維持することができるでしょう。
ひび割れしやすくなる
増築では、耐久性の異なる2つの建物をつなげるので、家全体の耐久性が低くなりひび割れしやすくなります。とくに、外壁の接合部はひび割れしやすく雨漏りするかもしれません。
増築の特性上しかたがない部分でもありますが、実績が豊富で信頼できる業者に施工してもらうことで、仕上がりの精度を上げられます。また、築年数が経過していて外壁リフォームが必要なタイミングであれば、増築と外壁リフォームを同時におこなうのもひび割れ対策として効果的です。
増築の費用相場(事例別)
増築の費用相場を事例別に紹介します。なお、どんな増築工事をするにしても、使用するパーツや増築規模、建物の構造などにより費用は大きく変動します。一般的な相場として参考にしてください。
1階部分を増築した場合
木造住宅の1階部分に6帖の部屋を増築した場合の費用は、一般的には214万円〜が相場となっています。鉄骨住宅だったり増築する部屋が和室だったりすると、相場より高くなりがちです。もちろん、壁紙や床などの内装によっても費用は変動します。
水廻りを増築した場合
トイレ、キッチン、お風呂を増築した場合の費用相場は以下の通りです。
・トイレ:70万円~
・キッチン:134万円~
・お風呂:100万円~
なお、水廻りの増築費用は、以下の事項によって大きく変動します。
・設置する階
・本体のグレード
・広さ
・配管工事の有無
とくに、2階に新しく水廻りの設備を増築する場合は配管工事が必要になるので、相場より高額になる可能性があります。
ベランダ・バルコニーを増築した場合
2階に1畳程度のバルコニーやベランダを増築するときの費用は、一般的には25万円〜が相場となっています。増築の規模や補強工事の有無、取り付け方などで費用は変動します。
平屋を2階建てに増築した場合
平屋の2階に6帖の部屋を増築する場合の費用は、一般的には340万円〜が相場となっています。もともと2階建てにすることを想定していない場合は、1階部分の補強工事が必要になるのでより高額となるでしょう。補強工事の内容や2階の間取り、設備によって費用は変動します。
離れを増築した場合
6帖程度の離れを増築した場合の費用相場は以下の通りです。
・在来工法:167万円~
・プレハブ工法:150万円~
離れの増築パターンは在来工法とプレハブ工法の2つに大別されます。在来工法は、一般的な木造住宅の建築方法で、人の手で一から作り上げます。一方、プレハブ工法は工場でつくられたパーツを組み立てて作ります。一般的には、プレハブ工法のほうが在来工法より工事期間が短く、コストが抑えられる特徴があります。
離れを増築する場合も、増築する部屋の広さや間取り、水廻りの設備の有無などによって費用は大きく変動します。地盤工事が追加になると、費用が想定より高額となるかもしれません。
増築するときに知っておくべきポイント3つ
増築も新築と同じように建築確認申請をおこなわなくてはいけない場合があります。そのほか、建ぺい率や容積率の確認、登記の変更手続きが欠かせません。詳しく解説していきます。
建築確認申請が必要な場合がある
建築確認申請は、建築しようとする建物が建築基準法などの法律に適合しているかを確認する手続きです。建築確認申請が必要な条件と費用相場、審査期間は以下の通りです。
条件 | 1、2のいずれか(もしくは両方)に該当する
1.防火・準防火地域である 2.増築部分の床面積が10㎡(約6帖)を超える |
費用相場 | 14万円~27万程度 |
審査期間 | 1週間~2週間程度 |
自分が住んでいる地域が防火・準防火地域かどうかは自治体に問い合わせることで確認できます。ホームページに掲載している場合もあるので事前に確認しておきましょう。
また、建築申請に必要な費用は、建築物の面積や書類作成を依頼する業者などによって変動します。審査期間は、長い場合で70日ほどかかることもあります。建築確認申請をおこなった証明である確認済証がないと工事が始められないので、余裕をもって計画を立てましょう。
建ぺい率と容積率を確認する必要がある
建物には、建築基準法によって建ぺい率と容積率の限度が定められています。建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合であり、容積率は敷地面積に対する建物の総床面積(2階・3階・地下などを含めたすべての面積)の割合のことです。
建ぺい率と容積率の限度は地域ごとに異なります。一般的には建築士など専門の人が考慮してくれるので自分で計算する必要はありませんが、増築面積を自由に決められるわけではないことは頭にいれておきましょう。
登記の変更手続きをしなければならない
増築して床面積が増えた場合は、登記の変更手続きをしなければなりません。建築確認申請と混同されがちですが、登記の変更手続きには例外となる条件はなく、床面積が増えたときは必ずおこなう必要があります。自分でおこなうこともできますが、建物の図面の作成など複雑な作業もあるため、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
登記の変更手続きに必要な費用は、一般的には9万円〜が相場ですが、敷地や建物の規模や形状、必要な書類がそろっているかなどによって変動します。
登記の変更手続きは工事終了から1か月以内におこなうことが法律で義務づけられています。登記の変更手続きをしておかないと、売買できなかったり相続手続きができなかったりと後々困る可能性があるので、忘れずにおこないましょう。
増築で家族にとって住みやすい空間を手に入れよう
この記事では、増築のメリットとデメリット、注意点などを解説しました。増築では、もともとある家と新しくつなぐ部屋の耐久性が異なることもあり、施工には高い技術が必要です。
当社では一級建築技能士の資格をもったスタッフや、経験豊富なスタッフが在籍しています。それぞれの家庭にとってベストな選択をご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。